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2024.12.18

万が一の相続に備えた遺言と意思能力喪失時の準備

カテゴリー
相続・贈与
万が一の相続に備えた遺言と意思能力喪失時の準備

概要

近年、万が一の相続に備えて遺言を準備される方が増えていることを実感しています。しかし、自身が認知症などで意思能力を失った場合の備えをされている方は、ほとんど見受けられません。高齢になってからの認知症に限らず、事故や脳梗塞などで、突然意思能力を失う可能性は誰にでもあります。特に不動産経営や会社経営をされている方は、契約などの法律行為を行う場面が多いため、準備を怠るとご家族や会社関係者が困る場面が増えてしまいます。今回は、意思能力喪失時に備えるための対策として、「委任契約」および「任意後見契約」についてお話します。

目次

    法定後見制度の課題

    もし何も準備をせず意思能力を失った場合、不動産賃貸業をされている方であれば、借主から「意思能力のない方との契約はリスクが高いため、法定後見制度の手続きをしてください」と求められることがあります。実際に、私のお客様が借主である金融機関からそのように言われ、大変困られた経験があります。

    法定後見制度は、意思能力を失った後に本人に代わって法律行為を行う後見人を選任する制度で、裁判所への申請が必要です。後見人には裁判所が選任した弁護士が就任するケースが多いです。

    後見人が就任すると、不動産の売却や賃貸契約の更新などが可能になります。しかし、後見制度には以下の課題があります。

    財産管理の制約:

    ご家族が生活費の利用状況を報告しなければならず、大きな出費には許可が必要です。

    経済的負担:

    ご家族が生活費の利用状況を報告しなければならず、大きな出費には許可が必要です。

    会社経営への影響:

    会社経営者が法定後見制度で被後見人になると、法人の取締役を退任しなければならず、役員報酬を受け取れなくなります。(一定の条件で再任可能な場合もありますが、限定的です。)

    このように意思能力を失ってからの申請手続きは、ご家族の精神的経済的負担も大きいため、本人が元気なうちに手続きができる、「委任契約及び任意後見契約」をお勧めします。

    委任契約及び任意後見契約

    任意後見契約は、公証役場で公正証書で作成する必要があるため、委任契約も合わせて作成するケースが一般的です。

    まず、委任契約は、元気なうちの財産の管理を、例えば同居している長女に任せるというような契約です。高齢になって、銀行に行ったり、不動産管理の窓口を自分で行うのも大変になってきたときなど、ご家族に委任する契約です。

    委任契約

    委任契約は、元気なうちに財産管理を特定の方に任せる契約です。例えば、高齢で銀行に行くのが難しくなった場合や不動産管理の窓口対応が困難になった際、同居している長女に財産管理を委任することができます。この契約により、相続後の係争を防ぐ効果もあります。

    具体的には、次の内容を契約書に明記します。

    • 代理権目録の作成: 財産管理、保存、金融機関取引の権限を明確化。
    • 重要書類の管理: 登記済権利証、印鑑登録カード、預貯金通帳、キャッシュカードなどの管理を委任。

    これにより相続後、介護に関与していない遠い場所に住んでいた次女から、「母の生前の財産管理を勝手に行い、お金をおろしていたり、何の権限があってお姉ちゃんがやっていたの!」というようなことがないよう財産管理を正式にお願いする契約となっており、ご家族間のトラブルを未然に防ぎ、相続人に対して管理の正当性を示すことができます。

    任意後見契約

    任意後見契約は、元気なうちに作成し、認知症などで意思能力を失ったときに効力が発生する契約です。認知症を患ったときには裁判所に任意後見監督人の選任を申請することにより効力が生じます。またこちらはより個別具体的に委任事項を定める必要があり、具体例としては以下のような内容を定めます。

    ①不動産、動産等すべての財産の保存、管理及び処分に関する事項

    ②銀行等の金融機関、郵便局、証券会社とのすべての取引に関する事項

    ③保険契約(類似の共済契約等を含む。)に関する事項

    ④定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払に関する事項

    など、お願いしたい事項をできる限り列挙する必要があります。委任契約と違い、任意後見契約は、裁判所に申立てる必要があるため、委任する事項は詳細に定める必要があるのです。この内容については、各人ごとに異なるため、作成するときには専門家に相談することをお勧めします

    相続は早めの準備が重要

    大切なポイントは認知になってからの手続きでは、法定後見(成年後見)制度になってしまい、財産管理を任せる相手は家族から選べず弁護士などになってしまいますが、元気なうちに準備できる任意後見契約では、ご家族を管理者として自らの意思で選べる事です。

    これにより、ご家族のその後の生活も全く異なってきますので、ぜひ任意後見契約を元気なうちにご準備頂くことをお勧めします。

    専門家による監修

    本ガイドは、記事の内容に関する広範な知識と実務経験を持つ専門家によって監修されています。専門家による監修は、本ガイドの内容の正確性と信頼性を保証するものであり、読者が安心して情報を活用できるようにするためのものです。監修を担当された専門家の情報は以下の通りです。ご興味がある方は、さらなる情報や個別のご相談について、直接お問い合わせいただければと思います。

    監修:西村 敦正

    千葉県出身、専修大学卒業後、公認会計士山田淳一郎事務所に入所。税理士資格取得後、船井財産コンサルタンツに転職し資産税専門税理士として活躍。2004年に税理士法人BAMCを設立し代表税理士に就任。その後事業承継案件1000件以上を手掛けるなどの実績を誇る。2014年に開通した東京都市計画道路環状2号線(マッカーサー道路)にかかる事業用地の資産活用コンサルティングや秋葉原再開発に伴うCRE戦略を手掛けるなどの実績を併せ持つ実務家でもある。

    ※当記事は税理士などの専門家の監修の下、細心の注意を払って作成しておりますが、万が一内容に不備があり、読者に不利益や損害が生じた場合でも、㈱BAMC associatesは責任を負いかねますのでご了承ください。記事に関するご指摘は、大変恐縮ですが、当事務所の「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。ただし、記事に関するご質問は回答出来ませんので、あらかじめご理解のほどお願い申し上げます。

    著者
    BAMC 新井
    記事作成日
    2024.12.18

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