税務調査が初めて決まった際は、誰しもが、どのような調査を受けるのかわからず、不安を抱くと思います。今回の記事では税務調査の流れをSTEPごとに解説し、調査時に指摘されやすい勘定科目(収益や費用、給与など)についても合わせて紹介します。流れや指摘されやすいポイントを理解することで、少しでも不安解消の手助けになればと思います。
税務調査の流れ
税務調査実施の事前通知〜調査当日や調査結果の受け取りまで、税務調査全体の流れについて解説します。
STEP.1 税務調査の事前通知
納税者は税務署から税務調査の事前通知を受け取ります。この通知には調査予定日、調査対象となる期間や税目などの基本情報が含まれています。通知は電話や書面で行われ、顧問税理士がいる場合は税理士を通して通知されます。
★税理士からのワンポイントアドバイス
まれに突然、税務署の職員が訪れる場合があります。落ち着いて応対し、顧問税理士の立会いでの調査を希望する旨をお伝えしましょう。
STEP.2 調査日の日程調整
税務署との間で日程調整が可能です。忙しい期間を避けるために、納税者側の事情を考慮した日程調整が行われます。
STEP.3 事前準備
税務調査には決算書類、帳簿、領収書、契約書など、多岐にわたる書類が必要です。事前に税務署から指示された書類を準備します。また税務署からの質問を想定して用意することで、調査当日の質問に対して慌てて回答する必要がなくなり、スムーズに対応できます。
STEP.4 調査当日の進行
税務調査当日は、税務署の職員が納税者の事務所や店舗を訪問し、提出された書類の確認や質問による検証を行います。この過程で、帳簿記載の正確性や税金の計算方法の適正性がチェックされます。顧問の税理士がいる場合は税理士が質疑に回答しますが、質問の内容によっては、納税者の回答が必要な場合もあります。
★調査の場所について
税務調査を受ける場所は原則、本店住所となります。やむを得ない事情がある場合は、税理士事務所のオフィスなどでの対応も可能です。
STEP.5 指摘への対応
調査の結果、不備や疑問点が指摘された場合、納税者はこれに対して適切に対応する必要があります。場合によっては、追加書類の提出や修正申告が求められるケースもあります。
STEP.6 調査結果とその後の手続き
税務調査の結果、申告内容に問題がなければ是認され、問題があれば修正申告や追加納税が必要になります。重大な問題があった場合には、罰則が科されることもあります。また調査後は将来の調査に備え、日頃から正確な帳簿記録や申告を心がけることが重要です。税理士との連携を強化し、専門的なアドバイスを定期的に受けることも、有効な対策となります。
税務調査時に指摘されやすい勘定科目(収益や費用、給与など)
納税者が提出した申告内容の正確性を検証するために、調査時に注意深く目を通す勘定科目があります。これら勘定科目は、業務と関連のない支出が業務用として計上されているケースが多く、指摘されやすい勘定科目になるため、納税者は調査時に経費の正当性を証明できる準備が大切になります。
法人が指摘されやすい勘定科目
広告宣伝費:
法人が実施する広告宣伝活動の費用が、業務と直接関連しているかどうかが検証されます。例えば、業務と無関係なイベントへの出資や過剰と思われる広告費用が指摘される場合があります。
接待費:
業務上必要な接待以外の支出、特に高額な接待費や私的な接待が経費として計上されていないかチェックされます。レシートや名簿などの具体的な証拠の提出を求められることがあります。
研究開発費:
新技術や製品開発にかかる費用の計上が正当であるか、また、その開発が事業に直接貢献しているかどうかが審査されます。開発プロジェクトの計画書や進捗報告書などが求められることもあります。
役員報酬や役員賞与:
経営に携わっていない社長の親族役員への報酬について、指摘されることがあります。具体的な仕事の内容を明示できるようにしておきましょう。
役員貸付金:
役員に対する貸付金が実質的には給与や賞与の支払いとして機能していないかが確認されます。これらの取引が適切な条件下で行われているか、適切に文書化されているかがチェックポイントです。
日当:
出張等に伴う日当が実際の必要経費を超えていないか、また、私的旅行の費用が経費として計上されていないかなどが検討されます。
個人事業主が指摘されやすい勘定科目
自動車関連費用:
車両の購入や維持に関わる費用が、私用と業務用とで適切に区分されているか確認されます。特に高額な車両の購入やガソリン代が業務の範囲内で使用されているかがポイントとなります。
家賃・光熱費:
自宅を事務所として使用している場合、家賃や光熱費などの経費が業務と私用とで適切に按分されているかどうかが検証されます。具体的な業務使用面積や使用時間などの根拠が求められることがあります。
通信費:
携帯電話やインターネット接続費などの通信費が、業務使用分だけでなく私的使用分も含めて申告されているかがチェックされます。特に高額なプランや複数の契約がある場合にはその使用目的や割合について検証されることがあります。事業での使用比率を日数、時間などで具体的に決めておくことが大事です。
売上:
個人事業主が業務用の商品やサービスを私的に消費している場合、これらが正確に売上として計上されているかどうかが問題視されます。
専従者給与:
家族を専従者として雇用している場合、その給与が実際に支払われているか、業務の性質に見合った適切な水準であるかが検証されます。
★税理士からのワンポイントアドバイス
税務調査で指摘があった場合、3~4年後に高い確率で再度税務調査が行われ、前回の指摘事項が改善されているか、チェックされます。その後、申告内容に問題がなければ、次の税務調査のタイミングは数年先になることでしょう。
今回は、税務調査の流れと指摘されやすい勘定科目について解説しました。税務調査の流れを理解しておくことで、ある日突然、税務調査の通知が届いた際にも慌てずに対応することができます。また指摘されやすい勘定科目を把握しておくことで、事前に必要な文書や根拠を準備することが可能です。税務調査はいつ来るかはわかりませんが、いつ来ても対応できるように備えておきましょう。
専門家による監修
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監修:橋本 隆
茨城県日立市出身。札幌観光大使。中小零細企業の資金調達および事業承継に強い税理士。2003年税理士試験合格。千葉県内の税理士事務所勤務を経て2007年4月BAMCグループに参画。千葉支店長、札幌支店長を歴任。2020年4月税理士法人BAMC代表社員に就任。金融機関、生命保険会社からの依頼で年間100本のセミナーを行う人気講師でもある。
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