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2024.05.27

MS法人を徹底解説:医療法人との違いやメリット/デメリット

カテゴリー
医療会計
MS法人を徹底解説:医療法人との違いやメリット/デメリット

概要

この記事では、MS法人について、その定義から医療法人との違い、提供するサービス内容、設立のメリットやデメリット、さらには設立の適切なタイミングや注意点に至るまで、包括的に解説します。MS法人を活用することで、どのようにして医療機関の運営効率を高め、税務上のメリットを享受できるのか、具体的な事例を交えながらお伝えします。

目次

    MS法人とは

    MS法人(メディカル・サービス法人)は、法令上の医療機関ではないため、医療法人が営利目的で行えない、営利を目的とした業務が行えます。医療に関連する多様なサービスを提供する一般的な株式会社や合同会社と同じ扱いとなりますので、病院やクリニックなどを運営している医療法人が、別会社としてMS法人を設立して、運営することが多いです。

    MS法人のサービス内容

    MS法人は、医療法人の経営を補完する形で設立され、以下のようなサービスを提供しているケースが多いです

    • 病医院の不動産賃貸:医療施設の建物や土地の賃貸管理
    • 訪問介護事業:在宅医療サービスの提供
    • レセプト請求、会計業務:医療費の請求や会計処理
    • リネンサービス:医療施設用のリネンの供給と管理
    • 不動産管理:医療法人が所有する不動産の管理業務

    (医療用品の調達と在庫の管理、医療機器の販売やリース業務 etc)

    MS法人と医療法人との違い

    MS法人と医療法人の主な違いは、営利目的のサービス提供が可能かどうかにあります。医療法人は非営利目的に限られているため、医療行為に直接関わる業務を中心に運営されます。一方でMS法人は、医療法人に属さないため、医療行為以外の営利活動が可能で、医療法人の経営効率を高める補完的な役割を果たします。診療と経営の効率化を目指してMS法人を設立し、医療以外の事業活動を通じて利益を得ることが可能です。

    MS法人のメリット

    MS法人(Medical Service Corporation)は、医療関連業務の経済的利益を追求するために設立する組織であり、多くのメリットを提供します。ここでは、MS法人が持つ主なメリットについて詳しく解説します。

    所得の分散による節税

    MS法人は、医療法人では行えない広範な事業活動を通じて、所得を効果的に分散させることができます。これにより、高額な個人所得税率から比較的低い法人税率へと税負担を移行させることが可能です。例えば、不動産の賃貸や業務委託による支払いを通じて、医療法人の所得をMS法人に移し、全体の課税所得を減らすことが可能です。これにより、経費の計上を増やし、全体の税負担を軽減します。

    経営の分離

    MS法人を設立することで、医療法人は医療業務に、MS法人は経営に関する業務に集中できます。これにより、経営の効率化が図られ、医療法人は診療に集中し、患者ケアの質を高めることが可能です。また、医療法人で問題が起きた場合でも、MS法人の財産は保護されるため、リスク分散にも寄与します。

    医療法の規制を受けない事業展開

    MS法人は医療法に規制されないため、医療法の規制がかかる医院やクリニックでは、できないような多種多様な事業展開が可能です。たとえば、医療機器や化粧品、健康食品の製造販売、訪問介護やデイサービス・デイケアなどの福祉サービスなどです。ただし、MS法人そのものは医療法の規制は受けませんが、医療機器や化粧品、健康食品などは薬機法等、展開する事業によっては規制がありますので、法制度には最新の注意を払いましょう。

    相続対策

    MS法人は、資産の法人化を通じて相続対策としても有効です。通常、医療法人が使用する不動産は、その代表や医師個人が所有していることが多く、医療法人からは地代や家賃が支払われています。これにより、被相続人の資産が増え、結果として相続税の負担が大きくなる可能性があります。この問題を解決するために、MS法人が被相続人から、貸している不動産を購入し、医療法人からの地代や家賃を受け取ることが一つの解決策です。加えて、MS法人の設立により、被相続人の家族をMS法人の役員や従業員として雇用することで、給与や役員報酬の形で資金を移動させることが可能です。これにより、資産を法人化し、事業継続のための経営資源を確保しながら相続税負担を軽減できます。

    MS法人のデメリット

    MS法人(Medical Service Corporation)は、医療法人では法規制の問題で行えない事業を行う企業や組織として設立して、その柔軟な運営構造から多くのメリットを享受できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切に対処することは、非常に重要です。以下では、MS法人の設立や運営に関連する主なデメリットとなります。

    運用コストの増加

    MS法人の設立と維持には、多くのコストが発生します。初期には設立手数料や登記費用が必要で、これらは法人を立ち上げる基本的な費用です。これに加えて、運営を始めた後も、税務委託費用や社会保険の加入など、継続的な費用が発生します。さらにMS法人の運用では、事務手続きが複雑化することにより、契約書の作成やその他の管理業務にかかる人件費も増加します。MS法人を設立する際には、これらの設立および維持コストを事前に詳細に計算し、節税効果と比較検討することが重要です。

    役員の兼務ができない

    医療法に基づき、医療法人の役員はMS法人の役員を兼任することができません。医療法人は非営利性を保持する必要があるため、その役員が利害関係にある営利法人の役員を兼務することが禁じられているからです。そのため、MS法人を設立する際には、医療法人の役員とは異なる人物、例えば配偶者や子ども、医療法人の経営に関与していない家族などを役員に起用する必要があります。

    消費税が発生する

    医療法人とMS法人の間での取引は、消費税が課されるため、予期せぬ税負担が生じることがあります。たとえば、医療法人がMS法人から不動産をリースし、その家賃に対して消費税が加算されるケースやMS法人に支払う事務業務委託費用にも消費税が適用されますので、消費税の影響も慎重に評価する必要があります。

    これらのデメリットを適切に管理し、事前の準備と対策を行うことが、MS法人の成功には不可欠です。対処法を理解し、計画的に事業を進めることで、これらの課題に対処できます。

    MS法人を設立するタイミング

    MS法人の設立に最適なタイミングについて、節税効果を最大化する観点から説明します。個人事業主の場合、年間所得が1,800万円を超えると、所得税の税率が40%に上昇するため、この点を節税の目安として設立を検討すると良いでしょう。一方で、医療法人がMS法人を設立する場合、利益が800万円を超えた時点で検討することをオススメします。800万円を超えると法人税の負担が大きくなるため、このタイミングでMS法人を設立することで、効果的な節税が期待できます。実際には個々の状況により適切なタイミングは異なりますので、設立を検討する際は専門家へのご相談がオススメです。

    MS法人の注意点!違法になる?

    MS法人の設立と運営にはいくつか注意点があります。適切に対処しない場合、法律違反に繋がるリスクがあるため、慎重に進めることが大切です。

    取引の適正

    MS法人が行う取引は、透明性と公正性が求められます。特に、親会社や関連会社との取引には注意が必要です。利益相反の可能性がある場合は、第三者の監査を受けるなどして、その公正な取引を保証することが大切です。不適切な取引は税務調査の対象となり得るため、常に公正な取引が行われていることを確認しましょう。

    従業員の転籍

    MS法人への従業員の転籍は、人事管理をする上で大きな課題となり得ます。転籍する従業員の同意はもちろんのこと、彼らの労働条件の変更が労働法規に則っているかを確認する必要があります。また従業員が以前の企業文化や環境からスムーズに移行できるよう、適切なサポート体制を整えることも重要です。

    許認可の取得

    MS法人は医療法の適用を受けないことから、基本的に許認可は必要ありません。ただし、特定の業種によっては政府や地方自治体からの許認可が必要です。許認可の有無や条件を事前に確認し、必要な手続きを適切に行うことで、事業運営の合法性が保たれます。許認可を得る過程での適切な手続きや書類の準備も、法的なトラブルを避けるためには欠かせません。許認可が必要なケースとしては以下のような例が挙げられます。

    • 医薬品卸売販売業許可
    • 管理医療機器販売業/賃貸業許可
    • 高度管理医療機器販売業/賃貸業許可

    (医療用品の調達と在庫の管理、医療機器の販売やリース業務 etc)

    これらの注意点を遵守することで、MS法人が健全に、かつ法律に則って運営されます。

    MS法人を設立することは、一見すると多くの利点があるように感じられます。しかし、実際には多くの失敗事例も存在します。例えば、従業員が転籍を拒否する、事業展開のための認可が下りないなど、予期しない問題が発生することがあります。MS法人の設立を検討されている場合は、専門家に相談し、慎重に進めることを強くお勧めします。

    ※当記事は税理士などの専門家の監修の下、細心の注意を払って作成しておりますが、万が一内容に不備があり、読者に不利益や損害が生じた場合でも、㈱BAMC associatesは責任を負いかねますのでご了承ください。記事に関するご指摘は、大変恐縮ですが、当事務所の「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。ただし、記事に関するご質問は回答出来ませんので、あらかじめご理解のほどお願い申し上げます。

    著者
    BAMC 新井
    記事作成日
    2024.05.27

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