ふるさと納税の仕組みと節税効果
ふるさと納税は、自分の好きな地域に寄付をして、その地域を応援できる制度です。寄付をすると、その地域から返礼品が届き、さらに寄付額を翌年の所得税・住民税から控除することができます。
なぜ節税にならないのか?
理由1.税金の前払い
ふるさと納税で支払った金額のうち、ほとんどが税金から控除されるため、支払う税金の総額は基本的に変わりません。
理由2.自己負担額
寄付金額のうち2,000円は自己負担となります。つまり、通常の納税よりも少しだけ多く支払うことになります。
理由3.控除の上限額
寄付金額には所得に応じた控除の上限があります。この限度を超えると控除は適用されません。
例えばですが、ある自治体に10,000円寄付した場合、翌年の所得税・住民税から8,000円(2,000円は自己負担となる。)が控除されます。つまり税金を前払いしている制度になるため、厳密には節税としての効果がないのです。
ふるさと納税のメリット
節税にはならないものの、ふるさと納税には次のようなメリットがあります。
1. 返礼品がもらえる
自己負担の2,000円がありますが、寄付をした自治体から、特産品などの返礼品が送られてきます。返礼品は地域の名産品や限定商品など、魅力的な品々が揃っておりますので、人によっては2,000円の自己負担で、かなりお得に感じるでしょう。
2. 税金の使い道を選べる
自分が応援したい地域に寄付することで、その地域の発展に貢献することができます。さらに寄付したお金がどのように使われるか、選べる自治体も増えています。
★税理士からのワンポイントアドバイス
年間所得が高額な方が多額のふるさと納税を行っていることがありますが、返礼品の価額(寄付金額の約30%)が、一時所得として課税対象となります。限度額が高額な場合でも100万円程度に留めることをオススメします。
ふるさと納税はどのような人がすべきか?
所得税と住民税を納めている人 | 所得税や住民税を支払っている人です。寄付額から2,000円を引いた金額が所得税や住民税から控除されるため、これらの税金を納めている人に向いています。 |
所得が高い人 | 高所得者ほど控除額の上限が高いため、より多く寄付でき、様々な返礼品を手に入れるチャンスがあります。 |
ふるさと納税をする時の注意点
ふるさと納税は誰でも利用できるわけではなく、以下のようなケースでは注意が必要です。
年収が150万円未満
控除される税額が少なく、ふるさと納税のメリットを十分に受けられない可能性があります。
手続きが苦手
ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告は不要ですが、多少の手続きは必要です。手間を厭わない人向けの制度です。
退職する年にふるさと納税をした人
退職した場合、退職して配偶者の扶養に入る等で、翌年の控除が十分に受けられない可能性があります。
ふるさと納税を活用した控除額は個人の状況によって異なりますので、不安がある方は専門家に相談しながら進めてください。
★税理士からのワンポイントアドバイス
ふるさと納税は今年の所得に対して控除される制度です。ある程度、今年の所得を予測して行うことがお得に活用するポイントになります。
ふるさと納税のやり方
ふるさと納税は以下の簡単な手順で利用できます。
1. 控除上限額を確認
自分の年収に応じて、寄付金額の上限を確認しましょう。総務省に全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安が掲載されております。
<総務省のガイドライン>
2. 寄附先と返礼品を選ぶ
ふるさと納税のサイトで、寄付したい自治体と返礼品を選びます。
3. 寄附を行う
Webでの手続きが一般的ですが、自治体への電話や書類の郵送・持参での手続きも可能です。
4. 受領証明書と返礼品を受け取る
自治体から寄附金受領証明書が届き、後日返礼品も送られてきます。寄附金受領証明書は確定申告で必要になりますので、大切に保管しましょう。
5. 税金控除の手続き
ワンストップ特例制度を利用するか、確定申告を行います。
ふるさと納税は、控除上限額を確認し、計画的に進めることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. ふるさと納税の控除はどのように受けるのですか?
A1. 控除を受けるためには、以下2つの方法があります。
- ワンストップ特例制度:確定申告を行わない場合、ワンストップ特例制度の申請書を提出することで、所得税の控除はされませんが、翌年度の住民税が減額されます。寄付先が5自治体以内である場合に限り、この制度を利用できます。
- 確定申告:確定申告をする場合、寄付金受領証明書をもとに寄付金控除を申告します。これにより所得税と住民税の両方で控除を受けることができます。
Q2. ふるさと納税で寄付できる自治体はどこでも良いのですか?
A2. はい、ふるさと納税では全国の自治体に寄付を行うことができます。自分のふるさとだけでなく、応援したい地域や返礼品に興味がある地域など、自由に選んで寄付することができます。
Q3. 返礼品はいつ届きますか?
A3. 返礼品が届く時期は、寄付先の自治体や返礼品の種類によって異なります。寄付後すぐに届くものもあれば、数か月後に発送されるものもあります。寄付をする際には、各自治体のふるさと納税に関するサイトで配送時期についての情報を確認することをおすすめします。
Q4. ワンストップ特例制度と確定申告のどちらを使えば良いですか?
A4. 確定申告が不要な方(会社員など)は、手続きが簡単なワンストップ特例制度を使うと良いでしょう。この制度を利用することで、確定申告をせずに住民税控除が受けられます。ただし、寄付先が5自治体以内の場合に限ります。もし、6つ以上の自治体に寄付する予定がある場合や、医療費控除やiDeCoの控除などで確定申告を行う必要がある場合は、確定申告を通じて控除手続きを行います。
Q5. ふるさと納税の手続きは難しいですか?
A5. ふるさと納税の手続きは簡単です。インターネットを通じて寄付する自治体と返礼品を選び、支払いを行うだけで手続きが完了します。その後、寄付金受領証明書が送られてくるので、ワンストップ特例制度または確定申告のいずれかで控除を申請します。ふるさと納税専用のウェブサイトを活用すれば、手続きもスムーズに進められます。
Q6. 寄付する自治体の数に制限はありますか?
A6. 寄付する自治体の数に特に制限はありません。ただし、ワンストップ特例制度を利用できるのは5つの自治体までです。6つ以上の自治体に寄付する場合は、確定申告が必要になります。
★税理士からのワンポイントアドバイス
ワンストップ特例制度を利用した方が、ふるさと納税を行った年の確定申告の申告期限をすぎて、医療費控除などを期限後申告した場合、ワンストップ特例制度が適用されなくなるため、注意が必要です。
ふるさと納税は、節税の手段ではないかもしれませんが、自己負担2,000円で返礼品を受け取ったり、地域貢献ができる非常に魅力的な制度です。応援したい地域を選びながら、自分の生活にちょっとした豊かさをプラスできるのがこの制度の大きなメリットです。
また寄付先によっては、税金の使い道を自分で選べる珍しい制度でもあります。だからこそ、この制度をうまく活用し、皆さんのふるさとや応援したい地域に貢献しながら、暮らしの中にちょっとした楽しみを取り入れてみてはいかがでしょうか。
専門家による監修
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監修:橋本 隆
茨城県日立市出身。札幌観光大使。中小零細企業の資金調達および事業承継に強い税理士。2003年税理士試験合格。千葉県内の税理士事務所勤務を経て2007年4月BAMCグループに参画。千葉支店長、札幌支店長を歴任。2020年4月税理士法人BAMC代表社員に就任。金融機関、生命保険会社からの依頼で年間100本のセミナーを行う人気講師でもある。
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