二重課税とは
同じ所得や資産に対して異なる国がそれぞれ課税を行うことを二重課税と言います。具体的には、日本に住む人が海外で収入を得た場合、その収入に対して日本とその収入を得た国の両方で税金がかかることを指します。例えば、日本に住むAさんがアメリカで仕事をして収入を得た場合、アメリカの税法に基づいてまずアメリカで税金がかかり、次に日本の税法に基づいてもその収入に税金がかかります。このように、同じ収入に対して二度税金がかかることを二重課税と言います。
なぜ二重課税が発生するのか
二重課税が発生する主な理由は、各国がそれぞれ独自の税法を持ち、それに基づいて課税を行うためです。具体的な主な理由として、居住地国と源泉地国の課税、租税条約の未締結、異なる課税基準が挙げられます。
居住地国と源泉地国の課税:
日本では、国内外で得たすべての所得に対して課税します(全世界所得課税)。一方、海外でもその国の税法に基づいて所得に課税されるため、同じ所得に対して両国で税金がかかることになります。
租税条約の未締結:
二重課税を防ぐためには、各国が相互に租税条約(※)を結び、お互いの課税を調整する必要があります。しかし、すべての国と租税条約を締結しているわけではないため、租税条約がない国で得た所得に対しては二重課税が発生しやすくなります。
※租税条約:二重課税を防ぎ、脱税を防止するために二国間で締結される条約です。この条約の主な目的は、どの国が特定の所得や資産に対して課税権を持つかを明確にすることです。
★税理士からのワンポイントアドバイス
どの国の居住者かによって、所得税の税率が変わり、申告する国も変わってきます。その国の居住者か非居住者なのかを判断する基準は滞在期間になります。そのため、ご自身の滞在期間の確認が必要です。
異なる課税基準:
各国の税法や課税基準が異なるため、同じ所得に対して異なる方法で課税されることがあります。例えば、ある国では給与所得として課税されるものが、別の国では投資所得として課税される場合などです。
★税理士からのワンポイントアドバイス
非居住者が国内の不動産を購入し、その不動産から収入を得ている場合は、その物件は条件によってはPEと判断されます。その場合、個人は総合課税となり確定申告が必要、外国法人は法人税の申告が必要となりますので注意が必要です。
二重課税になりやすい個人やケース
国際的に活躍する人にとって、二重課税は大きな問題です。二重課税の対象になりやすい人やケースをいくつか紹介します。
1. 海外駐在員
母国と派遣先の両方で所得税を課される可能性があります。
★税理士からのワンポイントアドバイス
日本から出向した場合は、出向までの日本にいた給与にて年末調整をする必要がある
2. 国際的に活動するフリーランス
複数の国でクライアントを持つフリーランスは、各国で所得を得ているため、それぞれの国で課税されるリスクがあります。
3. 外国企業の株式を保有する投資家
配当が発生した国と居住国の両方で課税される場合があります。
4. 国外に移住している日本人
日本の年金を海外で受け取る場合、年金収入に対して二重に課税されるリスクがあります。
5. 海外の銀行利息
海外の銀行に預金があり、その利息収入に対して現地の税金と居住国の税金の両方がかかることがあります。
6. 海外の不動産収入
海外に不動産を所有し、その賃貸収入に対して現地の税金と居住国の税金の両方が課されることがあります。
二重課税の回避方法
二重課税を避けるためには、いくつかの有効な方法があります。ここでは、その主要な方法について説明します。
1. 外国税額控除の利用
外国税額控除は、居住国で納付した税金を外国で支払った税金として控除する制度です。これにより、同じ所得に対して二重に課税されることを防ぎます。例えば、日本に住む個人が米国の株式から配当を受け取った場合、米国で源泉徴収された税金を日本の所得税から控除できます。
2. 租税条約の適用
租税条約とは、二重課税を排除し、脱税を防止するために二国間で締結された条約です。租税条約は所得に対して、どの国が課税する権利を持つか明確にします。これにより、同じ所得に対して両国が同時に課税するのを防ぎます。
★税理士からのワンポイントアドバイス
日本においては、20.42%の課税になりますが、国ごとに条約の内容次第では税率が異なるケースもありますので、確認が必要になります。
二重課税を回避する具体例
以下は二重課税を実際に回避したケースです
1. 米国株の配当所得
日本に住むAさんがアメリカの企業の株式を保有し、その配当を受け取った場合、アメリカでまず源泉徴収税が引かれ、その後日本でも所得税が課されるため、二重課税となります。このような場合、外国税額控除を利用してアメリカで支払った税金を日本の所得税から控除することができます。
2. 台湾人が日本で不動産収入を得ているケース
台湾人のBさんが日本に住みながら日本の不動産を所有し、その賃貸収入を得ている場合、日本での賃貸収入に対して日本の所得税が課されます。同時に台湾でもその収入に対して税金が課されるため、二重課税となりますが、日本と台湾の間には租税条約が締結されており、この条約を利用して二重課税を回避することができ、台湾で支払うべき税金から、日本で支払った税金を控除することができます。
監修:中島 龍
税理士法人BAMCの税理士。相続・事業承継対策、組織再編を得意分野としている。中小企業の経営者、富裕層を中心に顧問先は100件を超えており、豊富な実績は高い評価を得ている。銀行、保険会社、ハウスメーカーからの相談も多く、資産活用のプロ達が信頼を寄せる税理士である。
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