税務調査の現地調査で「金」というワードが話題に出ると、調査官の声のトーンが確実に上がり、目の色が変わり、空気が変わるのがわかります。相続税は財産価値のあるものに課税されるため、高額な絵画、骨董品、ダイヤモンドやプラチナ、真珠などの装飾品も当然課税対象です。
しかし、ダイヤモンド、骨董品、絵画に対しては、調査官の声のトーンは上がりません…。
なぜ金(きん)にだけ、相続税の調査官は注目するのか
これには大きな理由があります。その答えは明快です!
税務職員も一般の人間であり、真珠やダイヤモンド、絵画が本物か贋作かを見極める能力はありません。
仮にピカソの本物の絵画が調査官を通す応接間に飾られていても、それが本物であると判断し、「申告書に記載がありませんね!はい、2億円の申告漏れです。」と断言する能力はないため、まず指摘されることはないのです。 唯一指摘されるケースとしては、そのピカソの絵が亡くなる数年前に購入され、通帳に2億円の支出が記録されている場合です。大きな支出は徹底的に調べられるため、支払先が画廊であれば、絵画の存在がチェックされるでしょう。
一方で、代々承継された財産で、先代の相続でも相続財産に計上されていなければ、「贋作ですよ」と回答した相続人から絵画を取り上げ、専門の鑑定士に依頼するようなことは調査官にはできません。 なぜなら、相続人本人も「本物だ」と伝えられていたとしても、何でも鑑定団に出さなければ本当の価値はわからないのですから、申告しなかったとしても脱税行為とは言えないのです。
GINZA SIXには刀の販売店があり、1本1,000万円の名刀が並べられていますが、床の間から出てきた刀について、調査官が本物かどうか判断する能力はありません。(実際に「鞘から抜いて見せてください」と言われたこともありますが、その後話題に上がらずスルーされたこともあります)
したがって、床の間から刀が数本出てきたとしても、それは無視されます。
金(きん)だけが、相続税の調査官に注目される理由
金だけは別格です!
なぜなら、本物の金には本物を示す「刻印」が必ずあるからです。金の純度により、「日本国旗に999」や「K24」、「K22」などの刻印が定められています。 ぜひ「金の刻印」で検索してみてください。 つまり、金の質感を見抜けなくても、刻印を確認するだけで本物かどうかがわかります。しかも、金の価格は相場で明確なため、亡くなった日付の申告漏れについて、すぐに「いくらです!」と指摘できるのです。
加えて、金の20年前の価格は1gあたり1,100円でしたが、2024年11月7日現在では14,000円。12倍以上の価値です。ちなみにプラチナは2,300円が5,400円で、およそ2倍程度。この点も、調査官が色めき立つ理由の一つです。
昭和の時代には、企業の50周年記念などで純金のメダルを記念品として配るケースもよくありました。 私にも苦い経験があります。銀行の貸金庫から聞いたことのない企業の記念硬貨が出てきて、財産価値があるとは思わず見逃してしまいましたが、調査官は金の刻印について徹底的に教育されています。 その刻印を読み取られ、数百万円の計上漏れにつながってしまったことがありました。
つまり、昔価値が低かった時代に出回った金は、持っている本人が価値を知らないまま調査の日を迎えるため、現在の価値を知る調査官がこれを発見すると、色めき立つわけです。
ですから、金色の物体を見つけたら、まず刻印を確認しましょう。
しかも、現在高額な金に相続税が課税され、いざ相続税を納めるために金を売ろうとすると、金は所得税の総合課税となるため累進税率が適用され、最大で55%の税金が課されることもあります。 税金を払うために金を売ったのに、そこで半分程度の税金が取られてしまうと、相続税を払ったらほとんどお金が残らないため、悩みは尽きません。
金を見つけた際には、ぜひご相談ください。
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監修:西村 敦正
千葉県出身、専修大学卒業後、公認会計士山田淳一郎事務所に入所。税理士資格取得後、船井財産コンサルタンツに転職し資産税専門税理士として活躍。2004年に税理士法人BAMCを設立し代表税理士に就任。その後事業承継案件1000件以上を手掛けるなどの実績を誇る。2014年に開通した東京都市計画道路環状2号線(マッカーサー道路)にかかる事業用地の資産活用コンサルティングや秋葉原再開発に伴うCRE戦略を手掛けるなどの実績を併せ持つ実務家でもある。
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