少しでも税金を減らしたい
本音を言えば・・・経営者にとって、税金は悩みのタネ!?払いたくないけど、払わない訳にもいかない。何よりも税務署は怖い存在である(苦笑)そこで頼りになるのが税理士の先生—「少しでも税金を減らしたい(=節税したい)」と多くの中小企業が税理士と顧問契約を結んでいる。
もし税理士に「税金を減らしたい」とお願いをすれば、税理士は「利益を減らす」作業を行う。一方で利益を減らせば、株主や銀行などの投資家には嫌な顔をされてしまう。「税金を払いたくない」と「(銀行から)お金を借りたい」は相反するから悩ましい。
税金ばかり気にしていると、経営の本質を見失う
税金を減らしたら、皮肉にも借金の返済に苦慮した事例を紹介しておこう。
毎年黒字決算を続け、地元法人会からも優良法人として表彰されているA社から資金繰りの相談を受けた。黒字決算にもかかわらず、借入金の返済が進まないらしい。経営者A氏の見解では、「税金が多過ぎるから借入金が返せない」とのことであった。A社は税理士の指導のもと、支払期日を調整したり、社用車を高級車に乗り換えて償却費用を増やしたり、損金計上タイプの保険に加入したりと様々な節税対策を講じていた。結果として当期純利益は1,500万円—確かに良好な成績である。一方、銀行からの借入金残高は6億円、年間返済金額は約4,000万円となっている。減価償却費500万円を足した返済原資は2,000万円になる。損益状況はここ数年来変わらず、毎年△2,000万円の資金ショートを繰り返していた。なぜ、こんな簡単な事実に経営者Aは気づけなかったのだろう。実は、借入金返済は費用計上されない(支払利息のみ費用計上)、従って決算書上にも記載されていないため見逃していたのである。また指導にあたった税理士も「税金を減らしたい」という需要ばかりに捉われていたのであろう。結果として経営難へと陥ってしまった。結局のところ・・・「まだまだ売り上げが足りなかったのだ」そして「税金を減らすどころか、もっと利益を増やさなければならなかったのだ」
綺麗ごとを言うつもりはないが、悪戯に税金ばかり気にしていると、経営の本質を見失うことになりかねない。「税金は費用とみなす」・・・つまり事業運営には、必要不可欠な費用捻出が欠かせない。税金も費用と解釈するのである。事業運営を行う上で欠かせない費用として税金を捉えるべきなのである。
ちなみに前述の経営者A氏は、毎年の資金ショート△2,000万円を7年間に亘って個人資産から拠出し(計1億4,000万円)、老後資金を失ってしまった。見落としていた事実を知り、涙していた姿は未だに忘れられない。
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監修:辻 賢之輔
1990年に北海道拓殖銀行、2002年に財務コンサルティング企業を経て、2007年に㈱BAMC associatesを設立。豊富な実務経験と幅広いネットワークを活かし、中小企業経営、資産管理に特化した総合コンサルティングを展開。行政、金融機関、コンサル企業等主催のセミナーは年間50回を超える。
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